介護サービス事業者にとって、適切な契約書の作成は事業運営の要です。しかし、その重要性を認識しつつも、作成方法に不安を抱えている管理者さん、サ責さんも多いのではないでしょうか。本記事では、介護契約書の見方と作成のポイントを解説します。トラブルを回避するための具体的な方法をお伝えしますのでぜひ参考にしてください。
契約書と重要事項説明書との違い

介護サービスの契約において、契約書、重要事項説明書はそれぞれ異なる役割を持ちます。これらの書類の適切な役割分担と活用により、利用者への情報提供と法的保護の両立が可能になります。各書類の特性を理解し、適切に活用しましょう。
契約書の役割
契約書は、介護サービス提供における最も基本的な法的文書です。主な役割は、サービス提供者と利用者の間の権利義務関係を明確に定めることです。契約書には、サービスの核心部分である、提供するサービスの概要・提供期間・料金体系・解約条件などを簡潔かつ明確に記載します。
「別紙サービス内容説明書記載のサービスを提供する」といった文言を用いて、詳細な内容は別文書に記載するのも効果的です。契約書はトラブルが生じた際の証拠としても機能するため、両者の合意内容を正確に反映させることが重要です。契約書の役割を理解し、適切に作成することで、安定したサービス提供とトラブルの防止につながります。
重要事項説明書の位置づけ
重要事項説明書は、介護保険法で作成が義務付けられている文書です。
主な役割は、利用者がサービスを選択する際に必要な重要情報を提供することです。具体的には、事業所の概要・提供するサービスの内容・苦情処理の方法・緊急時の対応方法などが含まれます。
契約書が法的拘束力のある合意内容を記載するのに対し、重要事項説明書はより詳細な情報提供を目的としています。重要事項説明書はご利用者が事前に知っておくべき内容が記載されているため、契約締結前に交付・説明することが求められます。サービスを開始するにあたって、ご利用者に十分な理解と同意を得るための重要なツールです。
介護契約書の重要性と必要性

介護契約書は、介護サービス提供における権利義務関係を明確にし、トラブルを防止する重要な役割を果たします。契約書の利点や、不備によるリスクを理解することで、適切な契約書作成のポイントが明確になります。
契約書作成の利点
介護契約書は、サービス提供者と利用者双方にとって重要です。まず、契約内容の明確化により、サービスの範囲や条件について共通理解が得られ、誤解や期待のずれを防ぐことができます。また、料金体系や支払い方法を明記することで、金銭的なトラブルが回避できます。さらに、解約条件や個人情報の取り扱いなどを明示することで、将来的なトラブルのリスクも低減できるでしょう。
契約書内容の説明・交付が、利用者との信頼関係構築や、安定した事業運営につながり、結果として介護サービスの質の向上に寄与します。
契約書不備によるリスク
契約書の不備は、介護サービス事業者にとって深刻な問題を引き起こす場合があるため注意が必要です。まず、サービス内容や料金に関する曖昧な記述は、利用者とのトラブルの原因となり、最悪の場合、法的トラブルに発展する可能性があります。また、解約条件や個人情報保護に関する記載が不十分な場合、事業者側の権利が適切に保護されず、不利な状況に陥ってしまうリスクがあります。さらに、行政指導や監査の際に契約書の不備を指摘されてしまうと、事業の継続にも影響を与えかねません。これらのリスクを回避するためにも、適切な契約書作成が不可欠です。
介護契約書に記載すべき重要項目

介護契約書には、サービスの核心部分を明確に記載する必要があります。事業所の指定権者のホームページに契約書のひな型やサンプルが掲載されているケースが多いので、それを利用するとスムーズです。ひな形を各事業所に応じて修正し、適切に記載することで、利用者との間で明確な合意を形成し、将来的なトラブルを防ぐことができるでしょう。
1.サービス内容
サービス内容は、介護契約書に記載する最も重要な部分の一つです。提供するサービスの種類、頻度、時間帯などを具体的に記載することが求められます。内容にボリュームがある場合は、サービス内容説明書を別途作成し、契約書に添付する方法も効果的です。これにより、契約書本体はシンプルに保ちつつ、詳細な情報を提供することができます。
2.サービス提供期間
サービス提供期間は、契約の開始日と終了日、更新条件を明確にする重要な項目です。介護サービスの場合、利用者の状態変化に応じて柔軟な対応が必要となるため、固定期間の設定と自動更新条項の組み合わせが一般的です。例えば、「契約期間は1年間とし、双方から特段の申し出がない限り自動更新とする」といった記載をするケースが多いでしょう。
3.料金体系
料金体系の記載は、金銭的なトラブルを防ぐ上で非常に重要です。介護保険サービスの場合、利用者の自己負担額(通常1割)を明記するとともに、介護保険外のサービスがある場合はその料金も明確に示す必要があります。また、料金の支払い期日や方法(口座引き落としなど)、遅延時の取り扱いなども明確にしておくことが望ましいです。これらの情報を詳細に記載することで、利用者との間で料金に関する誤解を防ぐことができます。
4.身元引受人や保証人の役割
契約の際には、身元引受人や保証人の責任範囲を明示しておく必要があります。ご利用者が事業所に損害を与えた場合の対応や、利用料未払いの連帯保証など、賠償責任を求める場合があるからです。トラブルだけでなく、ご利用者が認知症などにより判断能力が低下した場合や、医療行為が必要になった場合などにも、代わりに判断を下してもらわなければならないケースも発生します。身元引受人や保証人の責任や義務の範囲をきちんと記載しておきましょう。
5.解約条件
解約条件は、通常の解約手続きとして、解約の申し出から実際の解約までの期間(例:30日前までの申し出)を明記します。また、利用者側の事由(入院、施設入所など)による即時解約の条件や、サービス提供者側からの解約条件(利用者による重大な契約違反など)を具体的に記載しておくことも大切です。
ただし、介護保険の運営基準では「正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない」と定められています。そのため、サービス提供者からの解約は制限され、やむを得ない場合に限定することが望ましいです。
6.個人情報保護に関する取り決め
個人情報保護に関する取り決めは、利用者の権利を守り、信頼関係を構築する上で欠かせません。契約書には、収集する個人情報の種類(氏名、住所、健康状態など)、利用目的(サービス提供、請求事務など)、第三者への提供条件(協力医療機関との情報共有など)を明記します。また、個人情報の管理方法や、利用者が自身の情報にアクセスする権利についても言及することが大切です。さらに、契約終了後の個人情報の取り扱い(保管期間や廃棄方法など)についても明確にしておくことで、より包括的な個人情報保護の取り決めを示すことができます。
契約書・重要事項説明書を作成する際の注意点

契約書・重要事項説明書の内容はご利用者、ご家族にその内容をしっかり理解してもらわなければならないため、当然ですがわかりやすい記載が求められます。略語・専門用語・外来語などは避け、誰もが理解できる言葉で記載することが大切です。読みやすいように文字のスタイルや大きさにも配慮しましょう。
また、事業所の情報や利用料金などもこまめなチェックが必要です。契約書の内容は、事業所の人員配置などにより定期的に変動します。また、料金やルールなども法改正や介護報酬改定により修正が必要になります。一度作成したら終わりではないことを理解しておきましょう。
適切な契約書作成で安定した介護サービス提供を

適切な契約書作成は、介護サービス事業者にとって非常に重要な取り組みです。介護契約書の重要性、記載すべき項目、関連書類の役割分担など抑えておくべきポイントを踏まえ、契約書を見直し、改善することが大切です。また、契約書作成は一度で完結するものではなく、法改正や社会情勢の変化に応じて定期的に見直し、更新していかなければなりません。適切な契約書作成を通じて、法的リスクを最小限に抑えつつ、質の高い介護サービスを安定的に提供していきましょう。
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投稿者プロフィール

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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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