訪問介護サービス提供時の転倒事故対応でお悩みではないでしょうか?
高齢者は加齢により心身の機能が衰えていくため、若い世代に比べるとどうしても転倒事故を起こしやすくなります。在宅で過ごされているご利用者の場合、発見が遅れると大事態に発展するリスクも伴います。また、ヘルパー1人の対応に不安を覚える方も少なくないでしょう。
そこで今回の記事では、訪問介護で転倒事故が発生したときの対応について解説します。リスクを最小限に抑えるために大切なこともお伝えしますのでぜひ参考にしてください。
転倒事故が発生したときの対応方法
転倒事故に遭遇したときにヘルパーがとるべき行動を確認していきます。
1.身体状況の確認・安全確保
何より大切なのはご利用者の安全です。無理に動かそうとせず身体状況の確認をしましょう。チェックすべき項目は以下の通りです。
- 意識レベルの確認
- バイタルサインのチェック
- 外傷・骨折等がないか
- 嘔気・嘔吐はないか
骨折や頭部打撲をしていた場合には緊急搬送が必要になります。まずはご利用者の安全確保を優先させ、転倒時の状況を冷静に把握しましょう。
2.事業所(管理者・サ責)に連絡
次に行うのが事業所への連絡です。事故の状況を伝え、取るべき行動の指示を仰ぎます。緊急搬送をする際は判断に迷うこともあるため、事業所からご家族や主治医、ケアマネジャーなどの関係各所へ連絡し、対応方法を検討しなければならないケースもあるでしょう。
また、大した事故ではなかったと判断しても事故の報告はしておかなければなりません。ご家族があとから事故を知らされた場合には信用を失ってしまいます。時間がたってから外傷や体調不良に気付くケースもあるため、どんな些細なことでも管理者やサ責に報告しておくことが大切です。
3.必要に応じて救急搬送
訪問介護の場合、施設と違って他に対応できるスタッフがすぐ近くにいません。1人暮らしの方や家族の不在時であれば、緊急搬送時にヘルパーが救急車に同乗することも考えられます。
搬送時には、救急車でご利用者の情報を救急隊に正しく伝えなければなりません。転倒時の状況やその時のバイタルのほか普段の様子も尋ねられます。
搬送時に必要な情報の一例は以下の通りです。
- 事故の状況
- 発見後のバイタル
- 応急処置の内容
- 持病
- かかりつけ医の連絡先
- 普段飲んでいる薬
- 普段のADL
- 普段のバイタル
- 食事量
- 最終排便
さまざまなことを聞かれるため、ご利用者の情報をまとめたものを一緒に持って行くようにしましょう。
4.事故報告書を記載する
訪問介護では、サービスの提供により事故が発生した場合には必要な措置を講じると共に、行った対応について記録に残さなければならないと定められています。
記録により事故の報告を行うのはもちろん、事故の再発防止につなげる目的もあります。速やかに記載し、他のヘルパーとも内容を共有することが大切です。
在宅介護での転倒予防策
ここからは転倒をできる限り予防するために必要な対策をご紹介します。
自宅の環境整備
一般の家は施設と違いバリアフリーの環境が整っていません。転倒のリスクを最小限に抑える環境整備を行うことが大切です。
自宅の環境整備の一例は以下の通りです。
- 床に障害物を置かない
- すべりにくい床材・カーペット
- 照明を設置する
- 段差を解消する
- トイレなどの導線確保
- 手すりを設置する
- 介護ベッドを導入する
- 杖や歩行器をレンタルする
在宅介護の場合は介護保険を利用して福祉用具の利用や住宅改修も行えます。ケアマネジャーに相談してみると良いでしょう。
筋力・体力の維持
転倒を恐れて動かなくなってしまうのは悪循環になります。毎日の散歩・ラジオ体操・ストレッチなどを習慣化し、筋力や体力の維持に努めることが大切です。
自発的に体を動かすのが難しい方は、デイサービスやデイケアに通うのもおすすめです。運動だけでなく、外出や人と交流する機会が認知症予防にもつながります。通所サービスが合わない方は、訪問リハビリを利用するのも一つです。
転倒したときのリスクを抑える方法
さまざまな対策をしていても、足腰の筋力が弱ってくる高齢者の転倒リスクはゼロにはなりません。転倒してしまったときのことを想定して備えることも大切です。
けがを予防する工夫をする
転倒してしまったときの備えをして、けがを最小限に抑えるようにしましょう。対応としては以下の方法があります。
- 床のマットを衝撃吸収マットに変える
- 家具の角に衝撃を吸収するガードを取り付けておく
- プロテクターを装着しておく(臀部・大腿部・頭部・膝など)
とくに、転倒を繰り返している方は骨折などの大けがを予防するための対策は必須です。また、お一人で動かれる前にトイレなどへのお声掛けをして介助することも有効です。事前にヘルパーが誘導して動作を見守ることで、可能な限り転倒を防ぐことができます。
緊急時の連絡手段を確保しておく
ご自宅で一人暮らしの方や、日中家族が不在で1人の方は転倒したあとの発見が遅れてしまうのが一番のリスクです。自分で起き上がることが出来ず、長時間放置されてしまうことによりけがなどの症状を悪化させてしまう恐れがあります。最悪の場合には命にかかわる危険性もあるので注意が必要です。緊急事態に備えて連絡手段を確保し、すぐに通報できる体制を整えておきましょう。
転倒などの緊急時に発見を遅らせない手段には以下のようなものがあります。
- 電話を手の届きやすい場所に置いておく
- 連絡先を見やすい所に貼っておく
- 自治体の緊急通報システムを利用
- 民間の緊急通報サービス利用
- 見守りカメラ
素早い発見にはなりませんが、少なくとも1日1回はヘルパーが訪問するように、訪問介護サービスを組み込むのも安否確認になります。また、配食サービスや見守り家電の利用も有効です。
ヘルパー同士の情報共有
ご利用者の情報を、ヘルパー同士がしっかりと共有することも大切です。
「最近歩行がふらついている」「昨日カーペットでつまづいたと言っていた」など、ご利用者の情報を共有できていれば、配慮したケアや声掛けにつながります。また、そのようなささいな情報やヒヤリハットを報告できていれば、事前にサ責が転倒予防の対策を講じたり、ケアマネジャーに伝えてケアプランを見直してもらったりできます。どのようなことでも気になることがあれば伝え、事故になる前に対応することが重要です。
高齢者の転倒は対応予防策の共有が重要
今回の記事では訪問介護における、転倒事故の対応方法について解説しました。高齢者にとって転倒事故は非常に大きなリスクです。骨が弱っているため骨折を起こしやすく、長期入院により寝たきり状態になってしまうことも考えられます。また、寝たきり状態は認知症になるリスクも非常に高まります。
訪問介護ではヘルパーがご利用者の状況を事前に察知し、こまめに情報共有することで事故が未然に防げます。
ヘルパー同士や、サ責への情報共有の手段として介護ソフトの導入がおすすめです。最近では介護業界全体でICT化が進んでおり、多くの事業所で導入が進められています。
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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