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介護報酬改定2024|訪問介護|基本報酬減額による現場のリアルな声

2024年の介護報酬改定での訪問介護の基本報酬が明らかになりました。

さまざまな変更点があるなか、とくに注目を集めたのは訪問介護サービスにおける基本報酬の引き下げです。訪問介護の介護報酬改定は、2024年4月1日から適用となりますが、この基本報酬の減額を受けて訪問介護は存続できるのか?という不安の声も上がっています。

本記事では、なぜ訪問介護サービスの報酬が下がったのか、介護報酬改定に向けてこれから訪問介護事業所はどのように運営していけばいいのか、などを詳しく説明していきます。また、訪問介護事業所のサービス提供責任者や管理者、経営者、ケアマネージャーさんなどのリアルな声なども紹介しています。

訪問介護の基本報酬が引き下げへ 単位数を再確認

2024年4月1日から訪問介護サービスの基本報酬は以下のように変更される予定です。基本報酬がマイナスとなったサービスは訪問介護のほか、定期巡回・随時対応型訪問介護看護夜間対応型訪問介護などです。単位数の減少率は2~3%程度と非常に高く、すべての訪問介護事業者に大きな影響があると考えられます。

第239回社会保障審議会・介護給付費分科会資料
第239回社会保障審議会・介護給付費分科会資料
第239回社会保障審議会・介護給付費分科会資料

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001195261.pdf

なぜ、訪問介護の基本報酬が引き下げられた?

訪問介護サービスの基本報酬が引き下げられた理由のひとつは、近年の訪問介護サービスの利益率が、全介護サービスの平均を大きく上回っていたことがあげられます。

厚生労働省が公表している「令和5年度介護事業経営実態調査結果」によると、2022年度決算において訪問介護サービスの利益率は7.8%でした。この利益率は、全介護サービスの利益率の平均が2.4%だったことを踏まえると、高水準な数値であったことがわかります。

これによって訪問介護サービスの利益率は比較的高いと判断され、訪問介護サービスの基本報酬は引き下げられることとなったのではないかと考えられます。

また、来年度の改定では介護報酬を全体として1.59%引き上げ、うち0.98%を「処遇改善加算」の拡充に充て、残りの0.61%を使って多職種の処遇改善を実現する考えを打ち出しました。

これは、利益率が低く多くの多職種が働いている特養や老健の基本報酬が引き上げられ、利益率が高く介護職員以外の職種がほとんどいない訪問介護の基本報酬の引き下げの大きな理由として説明されました。

2024年度版介護サービスコード表

2024年4月の報酬改定に対応した【全サービス掲載】介護サービスコード表です。

訪問介護の介護報酬改定に関わるみんなの意見は?

では、改定を目前にして訪問事業所の職員やヘルパー、在宅介護の中心を担ってもらっているケアマネジャー達は、この改定についてどのような意見を持っているでしょうか。何人かにリアルな声を聞いてみました。

大きな団地を背後に抱えて高齢者の在宅介護を担うヘルパー事業所です。エレベーターもない上階に住んでいる利用者も多くいます。ゴミ出しの準備から掃除、洗濯、買い物までいろいろな生活援助のサービスが主です。今回の報酬改定で「生活援助(45分以上)」の場合、1回の報酬は2250円から50円下がります。もともと高くない報酬でなんとかやっているので、これ以上報酬が下がれば、とてもやっていけません。自宅での暮らしを望む人は多いです。ヘルパーがいなければ、生活が成り立たなくなる利用者がたくさん出てきそうです。(訪問介護 60代サービス提供責任者)

サービス付き高齢者住宅を併設している訪問介護事業所であれば、時間とガソリン代等の経費等も効率よく回せるのですが、ウチのような小さな事業所にはちょっと無理です。これまでは、利用者さんやケアマネさんの要望を聞きながら、丁寧にサービスを提供していたんですが…。サービス提供範囲は車で30分圏内。近隣の事業所が複数閉めたため依頼は以前にも増して増えましたが、人手不足で断らざるを得ない状況です。今後は、やればやるほど赤字になりそうな気がします。(訪問介護 50代管理者)

人手が足りません。この改定を受けて給料が上がるとは誰も思っていません。「近くのスーパーに行って働いた方が、気楽で給料も高いよ」って登録のヘルパーさん達が話しているのを聞いて悲しくなりました。(訪問介護 50代ヘルパー主任)

改定ではヘルパーの賃上げを実施した事業所に対し、報酬を最大24.5%加算してくれます。厚労省は、基本料が減っても加算分を受け取れると説明していますが、事業所の収入全体に対して加算する仕組みなので、基本料が引き下げで減収になれば加算額も増えません。賃上げどころか、雇用の維持も難しくなるのではないでしょうか。(訪問介護 60代サービス提供責任者兼管理者)

人手不足や減額改定でもう無理かな。人材確保のため給与を上げなきゃと考えていたが、今回の改定では厳しいですね。訪問介護はできるだけ続けたいと思っていましたが、もう継続できないと思います。致し方ないです。(訪問介護 50代経営者)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など複数経営し、入居者を短時間に効率良く訪問できるケースは利益率が高くなりやすいと思います。ただ、集中減算もありますが。(夜間対応型訪問介護 40代サービス提供責任者兼管理者)

なんとか頑張っていくしかありません。今日も明日も利用者さんが待っていますから。運営が出来なくなったら残った仲間に頑張ってもらうしかないですよね。とにかくできるだけのことをやるつもりです。(訪問介護 40代管理者)

近くのヘルパー事業所が、ここ2,3年でずいぶん廃業してしまいました。廃止を決められた後にサービスを利用していた人たちの受け皿探しが相当大変でした。ヘルパーさんは、在宅介護になくてはならない存在です。どうか、何とか踏ん張ってほしいと願っています。(ケアマネジャー)

訪問介護の基本報酬が下がったのは、ビックリでした。その他の報酬が全体的に上がったこともあり、また加算も増えたり上がったりしているので、今後利用者のサービス控えなどが起きなければいいが…と思っています。(ケアマネジャー)

一軒一軒時間をかけて巡回する事業所は経営が苦しくなるのではないでしょうか。私たちはそういう事業所にお世話になっているのですが。引き下げによる事業所の影響は、ヘルパーさんをより必要としている郡部のほうが大きいかもしれません。(ケアマネジャー)

訪問介護事業所が介護報酬改定に向けて行うべきことは?

訪問介護サービスにおいて厳しい状況となることが予想される2024年度の介護報酬改定。ではこの状況に立ち向かうために訪問介護事業者は何をしていくべきでしょうか?

それは、拡充・新設された加算の取得の準備です。

一本化された介護職員等処遇改善加算の取得

2024年の介護報酬改定では、処遇改善加算・ベースアップ等支援加算・特定処遇改善加算の3つが一本化され、新たな介護職員等処遇改善加算が創設されます。訪問介護には他のサービスより高い加算率が設定されています。

これまでは、ベースアップ等支援加算・特定処遇改善加算を取得するために処遇改善加算の取得が必要であったため、一部の要件を満たしていても思うように加算が取得できないことがありましたが、今回の一本化により算定要件が見直され、加算が取得しやすくなります。

また、これまでは処遇改善加算(Ⅰ)・ベースアップ等支援加算・特定処遇改善加算(Ⅰ)を取得した最大の場合で合計22.4%の加算でしたが、今回、訪問介護には他のサービスより高い加算率が設定されています。最上位の「加算I」は24.5%。最下位の「加算IV」でも14.5%と、特養や老健、通所介護などの最上位より高くなっています。

(※加算率は訪問介護サービスの場合)

特定事業所加算の見直し

特定事業所加算について、看取り期の対応や中山間地域での継続的なサービスの提供なども評価されるようになりました。

認知症ケア加算の要件見直しや口腔管理加算の取得

訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算について、対象者の範囲を状態の軽い利用者へ広げるなど、従来より取得しやすくなるよう受入れに関する要件が見直されています。

また、利用者の口腔ケアの情報連携を評価する加算も新たに創設されました。

「処遇改善加算」の拡充で、ヘルパーの賃上げを具体化し、他の加算も併せて取得すれば、事業所の収入が大きく減ってしまう事態を避けられる。あるいは事業所の収入を増やせるかもしれません。

特定事業所加算の取得にはテレッサモバイル

訪問介護は地域包括ケアの要です。サービスを持続・継続するために、加算取得の準備をしていきましょう。

「テレッサモバイル」は、介護記録に特化したシステムです。介護記録はLINEのアプリ上からリアルタイムで記録・報告することができ、特定事業所加算の要件となる「サービス毎の報告」が可能になります。

また、特定事業所加算の取得や継続に関わるサポートも行っていますので、介護記録の電子化とともに特定事業所加算の新規取得や継続を考えている事業所にはおすすめです。

2024年の介護報酬改定による経営の不安を感じる訪問介護事業所の方は、お気軽にお問い合わせください。

2024年度版介護サービスコード表

2024年4月(6月)の報酬改定に対応した【全サービス掲載】介護サービスコード表 です。
携帯用サービスコード表として、介護サービス・介護予防サービス・地域密着型サービス全般について基本的なサービスコードを抜粋し、その合成単位・内容の概略について記載しています。

Author Profile

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。