訪問介護事業所で進むICT化。全国の訪問介護事業所の半数以上が何かしらのICT機器を活用しているという調査結果が出ています。
しかし一方で、半数程度の事業所はICT化に困難を感じているということでもあります。
この記事では、なぜICT化を進めることが難しいのか、どうすればスムーズに導入できるのかを紐解いていきます。ぜひ最後までお読みください。
訪問介護事業所におけるICT化の現状
ICTとは「Information and Communication Technology」(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の頭文字をとった略語で、情報通信技術のことを指し、IT技術を有効に活用して情報を伝達することに重点がおかれた考え方です。
訪問介護の現場では、介護ロボットや、実施記録の電子化などのICT機器の導入が増えており、こうした機器の導入より、生産性や業務効率アップにつながるのはもちろん、介護スタッフの負担軽減や、サービスの質の向上など、さまざまな効果が期待できるでしょう。
さらに、政府が2025年を目途として実現を目指している、高齢者が住み慣れた地域で、ひとりひとりが自分らしく暮らすことができる「地域包括ケアシステム」の構築にもプラスとなります。
コロナ禍以降、IT導入補助金などの補助金や助成金を活用して導入する事業所も急激に増え、令和6年度の厚生労働省の調査によると、調査対象事業所のうち67.5%の施設で何らかの介護ソフトが導入されています。以下はその一例です。
●利用者に関する記録(基本情報、要介護認定情報、家族情報等)の作成・保管
● アセスメント表の作成・保管
● 居宅・施設サービス計画書の作成・保管
● サービス提供記録の作成・変更・閲覧・保管
● サービス提供票(実績)の作成・変更・保管
● 事業所内の情報共有
● 介護給付費明細書・請求書の作成・変更・印刷
特定事業所加算の算定要件にもICT導入が必須ともいえる項目もあり、注目がさらに高まっています。
訪問介護事業所のICT導入のメリット
訪問介護事業所がICT機器を導入するメリットを簡単に見ておきましょう。
・業務効率がアップする
・情報の連携がスムーズになる
・データ活用によりサービスの質が向上する
・ペーパーレス化が実現する
・特定事業所加算の算定に有利
ICT化の大きな魅力は、業務効率の向上です。例えば、訪問介護の記録業務にICTを導入すると、介護者は介護記録をスマホやタブレットから入力できることで直行直帰が可能になり、管理者はリアルタイムで内容を把握できます。サービス漏れを防いだり、介護記録のチェックにかかる時間の平均化などもかなうでしょう。
ICT導入により情報をデータで管理することができれば、情報共有がスムーズになったり、紙の保管の手間や整理の時間も短縮できます。時間や場所の負担を軽減することはその他の業務に時間や労力をかけることができます。サービスの質の向上、スタッフへのケアや教育などにも余裕をもって取り組めるようになり、利用者やスタッフの満足度向上にもプラスの影響を与えます。
令和3年の厚生労働省の調査によると、ICTを導入した事業所の効果について、以下の結果が出ています。
文書作成の時間が短くなった | 81.9% |
入力済みの情報を他の文書でも利用できるようになった | 84.8% |
写真等の情報を効果的に使えるようになった | 68.6% |
ファイリングの時間が減った | 75.3% |
情報共有がしやすくなった | 90.3% |
根拠に基づいて議論ができるようになった | 60.9% |
支援の質の向上に活かせるようになった | 75.6% |
過去の文書(データ)の検索性が向上した | 72.4% |
職場以外でも情報を確認することができるようになった | 47.7% |
全体の業務量が減った | 68.5% |
保存のために必要な場所が減少した | 72.7% |
事業所内の情報共有が円滑になった(話し合い時間の増等) | 88.0% |
事業所外との情報共有が円滑になった | 56.3% |
導入の効果は高く、各事業所の満足度も感じられる結果ですよね。
ICT化が進まない訪問介護事業所の「ハードル」とは
ここまで見てきたように、訪問介護事業所のICT導入のメリットも多く、導入事業所も増えてはきていますが、一方で、ICT化を進められない、難しいと感じている事業所も一定数あります。
では、ICT化を進められない「ハードル」はどこにあるのでしょうか。見ていきましょう。
導入・運用コストが高い
一番に感じるのは、コストの高さ。
業務効率が上がり、費用対効果はあるということが理解はできていても、数値として表しにくい効果面に対し、数値として見えるコスト。
特に、導入時の機器購入やシステムなどの初期費用が負担に感じる事業所が多いのではないでしょうか。
訪問介護事業所の業務は多岐にわたり、複合的な機能を備えたICT機器であればそれなりに導入コストや運用コストが高くなってしまう傾向にあります。
導入にかける時間がない
日常業務にICT機器を導入するということはそれなりの労力が必要です。
計画・機器の比較・試算・スタッフへの教育など…
忙しい訪問介護事業所の皆さんにとって、こうした時間や労力はとても負担に感じてしまいますよね。
ICT機器の種類も多く、各社を比較して問い合わせをしたり資料請求をしたり、お試しをしてみたり…それだけでも「今は無理」となってしまいそうです。
スタッフが反対している・対応できるか不安
ICT導入に踏み切れない事業所からは、スタッフが反対している、高齢のスタッフが対応できるか不安だという声もよく聞かれます。
人材不足に悩む介護業界、ひとりひとりのスタッフの意見を大切に、離職はなんとしても防ぎたいものです。反対の声があるなかで強引にICT機器の導入を進めてしまえば、関係性が悪化してしまったり、離職につながることもあるため慎重さが大切です。
訪問介護でICT導入|成功の鍵
このような訪問介護事業所のICT導入へのハードルをどのように超えれば良いのか、ここからは成功の鍵を見ていきましょう。
規模・希望に応じた資料請求
ICT機器が気になりはじめたら、まずは資料請求や問い合わせが最初のアクションです。しかし、例えば「訪問介護 ICT」などで検索して表示される機器をやみくもに資料請求したり問い合わせをしていくと、実際は事業所に合わないのに営業の電話がかかってきたり、資料の読み込みに時間がかかってしまったりと無駄な時間を費やしてしまいます。
ICT機器は、事業所の規模感や機能面に応じて初期費用や月額利用料が設定されているものが多いため、最初の時点でしっかりと見極めることが大切です。
多くても3つほどに絞ってから資料請求などを行うといいでしょう。
小さく始める
いろいろな機器の機能を見てしまうと、どうせならあれもこれもと加えていきたくなりますが、機能が多ければ多いほど、当然、覚える操作も多く、スタッフへの教育も大変になります。
どこを効率化したいのか、どこに困っているのか、また、どこからならできそうかを考え、小さく始めることが大切です。
一点気を付けるべきことは、最終的にICT化をかなえたい業務が、選ぼうとする機器についているかどうかも確認しておきましょう。
後々「この部分も効率化したい」と思った際に、導入した機器にその機能がない場合、新たに別の機器を導入するか、移行するという作業が生じます。
業務の流れ的につながりのない部分であればいいですが、流れを寸断してしまい、余計に時間や手間がかかってしまうことは避けたいですよね。
小さく始めることでスタッフの負担も最小限に抑えられるため、最初は「難しいかも」と感じていたスタッフも「これならできるかも」に変わるかもしれません。
補助金を活用する
費用面では、小さく始めることで費用を抑えることもできますが、補助金を活用するというのもひとつです。
例えばIT導入補助金は、介護システムも対象となっており、多くの介護事業所が当補助金を活用してICT導入を叶えています。
申請すれば必ず採択されるというものではありませんが、採択されれば費用の負担が軽減されるため、チャレンジしてみるのも良いでしょう。
期限を決める
ICT導入においても、いつまでに導入するという期限を決めるというのはとても重要です。
期限が決まっていないと、今月は忙しいから、と、延び延びになってしまいがちです。忙しい事業所は、時間の余裕は簡単には生まれません。
少し大変ですが、資料請求完了・機器の選定・試用期間(あれば)・スタッフの教育・導入完了の各スケジュールをあらかじめ立ててからスタートするとスムーズに進みます。
ICT機器を実際に導入した事業所のアンケートでも、ICT導入にあたり工夫したこととして、83.2%の事業所が「課題分析をした上で導入計画を作成した」そうです。
冷静に計画をたて、ひとつひとつ着実に進めることで、ハードルに感じていた部分について解決策が見えてくるでしょう。
実際にICT導入において工夫したこと
厚生労働省のICT導入支援事業において、実際にICT導入をした事業所の「工夫」も参考になります。
ICT機器・ソフトウェア等の導入のために課題分析をした上で導入計画を作成した | 83.2% |
ICT機器・ソフトウェア等の導入や活用のために、委員会を開催した | 60.0% |
職場の環境整備を見直した(整理整頓等) | 85.5% |
業務の明確化と役割分担を見直した(業務全体の流れの再構築、テクノロジーの活用等) | 82.0% |
業務手順書・マニュアルを作成した(申し送り等の標準化等) | 71.1% |
記録・報告様式を見直した | 84.9% |
情報共有の方法を見直した | 87.7% |
OJTの仕組みづくりをした(研修の実施等) | 58.4% |
理念・行動指針の徹底 | 53.8% |
他事業者・事業所の事例を参考にした。(ICT導入事業実施事業所等) | 52.2% |
その他、自由記述では、
●「事務所で仕事をしなければならない」という考え方を無くす努力をした
●既存業務の見直しと効率化を図るよう検討・実践した
●LINE WORKS・ChatWork・SLACK等のチャットシステム導入・職員間の情報共有
●ICTへの拒否感の強い職員に拒否されずに聞いてもらうための工夫
●ICT機器の取扱いやLIFEについての研修会を繰り返し実施
●トップダウンにならないように、職員の納得、実感により少しずつ活用した
●トップ層が率先して導入を図り、デジタル弱者に対しても配慮を示す
このような意見が出ていました。やはり、スタッフに対しての配慮という面もしっかり感じますね。
いかがでしょうか。これならできそうかも、と感じていただけましたか?
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5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
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