訪問介護事業所のヘルパー不足でお悩みではないでしょうか。
介護業界全体が人材不足なため、どの事業所でも悩みは同じかもしれません。
とはいえ、ヘルパーさんがいなければ介護サービスが提供できないため、どうにか対策をしなければ経営が立ち行かなくなってしまいます。
そこで今回の記事では、ヘルパー不足の現状と対策6選を解説します。訪問介護事業所運営のヒントにしてください。
訪問介護事業所におけるヘルパー不足の現状
東京商工リサーチによると、2023年の訪問介護事業者の倒産が12月15日までに60件にのぼり、年間の倒産件数が最多となったといいます。
訪問介護事業所は、小規模や零細事業者が多いため大手企業のような安定した運営を継続することが難しいのが実情です。コロナや物価高の影響もありますが、深刻なヘルパー不足も倒産の要因の一つです。
厚生労働省の「第220回社会保障審議会介護給付費分科会資料」によると、訪問介護員の有効求人倍率は2022年度時点で15.53倍。これは、施設介護職よりも大幅に高い倍率になっています。約8割の事業所が訪問介護員の不足を感じており、ケアマネジャーから紹介のあった方へのサービス提供を断った理由の9割以上が、ヘルパー不足のため対応ができない状況であったと回答しています。
参考:東京商工リサーチ「2023年の「訪問介護事業者」倒産が 60件に急増 ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新」
参考:厚生労働省「第220回社会保障審議会介護給付費分科会資料」
訪問介護でヘルパーが不足する原因
介護業界で働き手が不足しているのは周知の事実ですが、同じ介護職の中でも訪問介護事業所のヘルパー不足はさらに深刻です。
訪問介護でヘルパーが不足する要因を考えていきましょう。
少子高齢化の影響
日本は超高齢社会を迎え、65歳以上の人口は令和4年10月1日現在で3,624万人となり総人口の29.0%となっています。昭和22〜24年に生まれた団塊の世代が65歳以上になったのは平成27年ですが、その後も65歳以上人口は増加傾向が続いており、令和25年には3,953万人を超えるピークを迎えると予測されています。
一方で出生数は平成28年から減り続けており、働く若い世代が減少しているのが実情です。訪問介護事業所で働くヘルパー自体も高年齢化しており、高齢者を支える年代がどんどん少なくなっています。
仕事が大変な割に給与が低い
介護職員の給与は処遇改善手当によりだいぶ改善されつつあるものの、まだ他の業界に比べると低いと言われます。
介護の仕事は専門的知識が必要な仕事ですが、社会的評価が低いのが実情です。「きつい・汚い・危険」の3Kとも言われ、体力的にも精神的にもハードな仕事の割に給料が見合わないと感じる方もいるでしょう。
ネガティブなイメージから介護職で働きたいと思う方が少ないため、募集をかけても人が集まらない深刻な状況が続いています。
訪問介護特有の勤務形態
介護業界の中でも訪問介護事業所のヘルパー不足が深刻な原因には、訪問介護特有の勤務形態が考えられます。
訪問介護の働きにくさの一つが、働く日や時間、給料が不安定な点です。何らかの理由で突発的にサービスが中止になることもあれば、逆に急な要請がかかることもあります。毎月決まった勤務日数や給料が確保できないため、他業態を選択する方も多いかもしれません。
また、ご自宅までの移動時間が発生するのも働きにくい点です。移動に関してはサービス提供責任者がある程度考慮してマッチングしてくれるとは思いますが、移動にかかる時間にはばらつきがあり、給料にも反映されにくいのが実情です。天候の悪い日なども移動にかかる負担は大きくなります。
就業時間や給料が安定し移動の負担もない施設やデイサービスなどの方が、働きやすい環境だと考える方も少なくありません。
1対1の対応の難しさ
訪問介護はご利用者の自宅で行う1対1の介護です。施設やデイサービスなどと違い、他のスタッフが近くにいるわけではないので、わからない場合にすぐに聞いたり助けを求めたりできません。
また、ご自宅のルールに従うためそれぞれに合わせた対応が必要です。そのご利用者、その家の数だけルールがあるので覚えることもたくさんあります。グレーゾーンと言われる、ヘルパーが判断に困るサービスも多く対応が難しいと感じる方も多いでしょう。
緊急時対応の不安を抱える方も多く、ヘルパー個人に大きな負担がかかってしまいます。
訪問介護は初任者研修の修了が必須
前段で説明したとおり、訪問介護は1対1の対応のため一定の技術や知識が必要です。そのため、ヘルパーとして働くためには「介護職員初任者研修」か、その上位の資格取得が必須になります。「生活援助従事者研修」の修了者もヘルパーとして勤務できますが、その場合は生活援助中心型のサービス提供のみとなり身体介護が行えません。
介護職員初任者研修は130時間のカリキュラムを受講するため、最短でも1ヵ月程度の期間が必要です。受講費用も5万円〜10万円程度かかるため、資格を持っていない方はハードルが高いと感じるかもしれません。
ヘルパー不足や離職を解消する対策6選
介護業界全体が人材不足だからといって人員の補充を諦めるわけにはいきません。ヘルパー不足を解消するためには少しでも対策を講じる必要があります。
ここからはヘルパー不足を解消する対策6選をご紹介します。
1.採用に力を入れる
事業所がどれだけ働きやすい職場環境を整えていても、訪問介護事業所で勤務するヘルパー自体が高年齢化している中でいつ欠員が出るかはわかりません。慢性的な人材不足は今後も続いていくことが予測されるため、常に採用に力を入れて人員を補充しておく必要があります。
人材募集にはハローワークや、採用サイトへの掲載・地域情報誌・ポスティングなどで発信する方法があります。採用イベントなどがある場合にも積極的に参加すると良いでしょう。
また、自社のホームページやSNSを魅力的なものになるように更新するのもおすすめです。独自のホームページを持っていない事業所も多いですが、最近は転職・就職先を探す際、ホームページやSNSを確認する人がかなり多くなっています。ホームページを持っていたとしても、更新が滞っていると「この事業所は大丈夫かな?」と逆にマイナスの印象にとられてしまうことがあります。
また、ただ仕事内容や処遇を掲載するだけでは他社との違いが伝わりません。どんな社員がいてどんな働き方ができるのかなどリアルな情報を発信すれば、働いた時のイメージが付きやすくなるでしょう。
2.能力に応じた評価や処遇制度を取り入れる
どれだけ長く働いていても、どれだけスキルが身についても、評価が上がらなければ職員も疲弊してしまいます。上長が定期的な評価面談を行いモチベーションアップにつなげることが大切です。
勤続年数・資格取得・スキルなど人事評価制度を明確にしておくと、職員も目標を持って勤務を継続することができます。
3.特定事業所加算を取得する
「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」などの加算を取得し、職員の給与アップを実現するのはもちろん「特定事業所加算」を取得し職員の給与に反映させるのも一つです。
特定事業所加算を取得するためには、研修・会議・情報伝達などの要件をクリアしなければならないため、結果的に職員が働きやすい職場環境づくりが実現します。
ただでさえヘルパー不足で、加算取得にかける労力をかけられないと思うかもしれませんが、加算を取得することで経営面でも人材面でも安定を見込むことができるため損はないでしょう。
4.研修・教育体制を強化する
前述のとおり、訪問介護は資格がなければ身体介護を行うことができないため、入社時に介護職員初任者研修などの資格取得を支援する取り組みも有効です。
また、入社してからも職員がモチベーションを保ちながら仕事を続けるには、成長が実感できる研修や教育体制が大切になります。資格取得を目指す職員の受講・教材・受験料などの費用を補助したり、学習のためのシフトを考慮したりとキャリアアップを応援する取り組みも重要です。
スタッフがスキルアップすれば、業務が効率化しサービスの質を高めることにもつながります。
5.働きやすい環境を整備する
登録ヘルパーやパートで働く場合は不規則で不安定な働き方になるため、雇う側としても柔軟な勤務ができるように配慮する必要があります。訪問介護で働く方には女性が多いので、産休・育休・介護休暇の取得がしやすく、突発的な休みにも柔軟に対応できる環境であれば続けやすいと感じてもらえるでしょう。
また、普段自宅とご利用者宅の直行直帰が多いヘルパーの場合、直接顔を合わせて話を聞く機会も少ないかもしれません。人間関係や仕事のやり方などに悩む人も少なくないため、定期的に面談などでメンタルケアを行うことも重要です。
6. ICTを活用して仕事を効率化させる
ヘルパーが働きやすい環境を作るためには、できるだけ業務負担を軽くすることが大切です。
業務を効率化させる手段としては介護ソフトの導入がおすすめです。介護ソフトを導入すれば記録にかかる時間が短縮します。ヘルパーが実施記録を事業所に提出しにいく手間も省けます。
サービス提供で時間がいっぱいになり、記録時間が残業になってしまっている方も多いかもしれません。介護ソフトを導入すれば隙間時間を使って記録ができるため残業時間も削減できます。
繰り返しになりますが、こうした事業所での取り組みは他事業所との差別化を図ることができ、転職・就職先としての魅力となります。このような魅力を、ホームページやSNSで定期的に発信していけるといいですね。
ヘルパー不足を解消し安定した事業所運営を
ただでさえ人材不足に苦しむ介護業界の中で勝ち残るためには他の事業所と差別化し、一人でも多くの方を採用しその方に長く続けていただける工夫が必要です。
給料や福利厚生の見直しのほか、モチベーションを持って働ける環境づくりや負担を軽減する取り組みなど、ありとあらゆる対策に力を入れなければなりません。
ヘルパーの業務負担を軽減する対策として、訪問介護のサービス実施記録をLINEで報告できる「テレッサモバイル」を利用してみてはいかがでしょうか。
テレッサモバイルはサービス実施記録をLINEで報告できる画期的なシステムです。ヘルパーさんは、実施記録をスマホのLINEで送信するだけで、サ責にサービスの実施が報告できます。実施記録を事業所に提出しに行かなくても済み、直行直帰ができるなど、ヘルパーさんにとっては当然メリットですし、実施記録のチェックなどの事務作業負担を大きく軽減するため、サービス提供責任者にもメリットが大きいでしょう。
さらに、テレッサモバイルを利用することで、特定事業所加算取得・継続にも役立ちます。特定事業所加算取得・継続のためのサポートも行っていますので、事業所を差別化してヘルパー不足を解消したい!とお考えの方はお気軽にご相談ください。
幅広い世代で利用されているLINEアプリを使用するので操作も簡単。スマホ操作が苦手な方でもすぐに慣れることができます。
ヘルパーさんの働きやすい環境づくりのためにもぜひ検討してみてください。
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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