「介護事業所は特定事業所加算を取らなくては生き残れない」
近年、いろいろなところで耳にする言葉です。
しかし、実際に聞いてみると
「取得の予定はない」という事業所が多くあります。
また、「特定事業所加算って何?」という事業所も多いのが現実。
国の進める方針と現場の考えには大きな隔たりがあるように感じます。
令和3年度の介護報酬改定では特定事業所加算に、さらにⅤ(5)が追加されます。
特定事業所加算とは何か。
取得することでどんなメリットがあるのかを紐解いていきたいと思います。
特定事業所加算とは
特定事業所加算とは、訪問介護事業所で算定できる加算率の高い加算のひとつです。
人材の質や職員の活動環境の整備等を行っている事業所に、サービスの質の高い事業所を評価するという観点から加算となります。
特定事業所加算にはⅠ~Ⅳ(1~4)があり、令和3年4月の介護報酬改定により、さらにⅤ(5)が追加となります。
体制要件・人材要件・重度対応要件を満たす項目により算定できる加算が異なります。
特定事業所加算の加算率
特定事業所加算の加算率は以下の通りです。(令和3年3月末まで)
<現行>
特定事業所加算Ⅰ 所定単位数の20%を加算
特定事業所加算Ⅱ 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算Ⅲ 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算Ⅳ 所定単位数の 5%を加算
令和3年4月の介護報酬改定でⅤが追加となります。
<改定後>
特定事業所加算Ⅰ 所定単位数の20%を加算
特定事業所加算Ⅱ 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算Ⅲ 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算Ⅳ 所定単位数の 5%を加算
特定事業所加算Ⅴ 所定単位数の 3%を加算(新設)
特定事業所加算を取得している事業所の割合は全体の約4割。
6割程度の事業所では取得していないと言われています。
特定事業所加算を取得していない事業所はの多くは
「利用者様の負担が増えるから」という理由が多いようです。
また、特定事業所加算は、介護サービスを営利目的に感じさせるという声もありました。
実際、取得している事業所と取得していない事業所では、最大で20%の売上の差が出ます。
それでは特定事業所加算するとどのようなメリットが有るのか、ということをまとめました。
特定事業所加算取得のメリット
1.経営の安定
特定事業所加算によって増えた収益は、処遇改善加算と異なり、使途は自由です。
加算を取得することで営利主義と見られ、結果、利用者にマイナスのイメージを持たれると不安に思っている事業所も多いですが、そういった事業所の多くがまた、経営的に困難を感じているということもあります。
介護サービスは、利用者の生活を守る大きな柱です。
しかし、そもそも会社自体の経営が安定しなくて、その柱を守ることはできるのでしょうか?
ある経営者が言われた言葉です。
職員は利用者にしっかりと向き合い、質の高いサービスを提供してくれている。経営者は、そんな彼らを守り、利用者を守るために、「経営」をすべきだ。
訪問介護の特定事業所加算の場合は利用者負担が増えることから利用者の減少を懸念されるケースがあります。
しかし、実際に特定事業所加算を取得した事業所からは、そのような事例は聞いていません。
特定事業所加算の取得は、経営を安定させ、職員や利用者を守ることになるのではないでしょうか。
2.職員の安定採用・定着
特定事業所加算の取得によって得た利益を、業務効率向上のための仕組みづくりに充てたり、職員の給与に反映させることで、職員の満足度も上がり、安定的な採用と定着につながります。
同じサービスを提供するのなら、加算が取れるサービスであるほうが、モチベーションアップにもつながるでしょう。
特定事業所加算取得のハードルの高さ
このように、訪問介護事業所にとって、特定事業所加算取得は大きなメリットがあります。
しかし、実際に取得するとなると、要件をクリアする必要があり、要件によってはかなりのハードルの高さを感じるものもあります。
例えば、“事前指示”と”適宜報告”。
ヘルパーがサービスに入る前に、サ責から指示を受けて訪問へ向かう必要があることや、サービスの完了の都度、サービスの内容についての報告をあげなくてはならないといったことです。
事前指示においては、LINEやメールなどのツールを使うことができますが、サービスの報告については、紙の介護記録(ヘルパー日誌)ではまず不可能です。
こうした指示や報告については、特定事業所加算では、きとんと文書で保管されているかという点を特に厳しくチェックされます。
特定事業所加算の要件クリアをICTで実現する
ICTは、こうした介護事業所の不可能を可能にするツールです。
LINEやその他アプリ、各種システムによって、事前指示や適宜報告が確実に行えるようになります。
「今のままでいい」
「今困ってないから」
困ってはないかもしれませんが、もっともっと楽になる方法があります。
「今のままでいい」と思っているのは誰なのでしょうか?
加算を取る=儲けるではなく、=職員のモチベーションを上げ、職員の満足度を上げ、職員の雇用や利用者の命を守ること。
そう考えることで、特定事業所加算へのイメージが大きく変わるのではないでしょうか。
Author Profile
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5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
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