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訪問介護は依頼を断れない?サービス提供を拒否できる正当な理由とは

介護サービスにおいて、ご本人やご家族からサービス提供依頼があった時に、拒否できないと聞いたことはないでしょうか?実際のところ、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」により、提供拒否の禁止が定められています。

とはいえ、正直なところお断りしたいような困難なケースに遭遇することもあるでしょう。そこで今回の記事では介護サービスの提供を拒否できる正当な理由について解説します。トラブルを避けるためのポイントもご説明しますのでぜひ参考になさってください。

冒頭で述べた通り、介護事業者はサービスの提供を原則拒否できません。これは「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第九条で定められています。

(提供拒否の禁止)

第九条 指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。

厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

運営基準には「正当な理由」があればサービス提供を断ることができると記載されています。解釈通知において正当な理由として認められているのは以下の3点です。

  1. 事業所の人員が理由でサービスに対応できない
  2. 居住地が事業所のサービスの提供範囲外
  3. 適切な訪問介護を提供することが困難なケース

「事業所の人員が理由でサービスに対応できない」というのは、単純にヘルパーが足りない場合です。人員不足ではサービス提供に応じ切れません。

2つ目は「居住地が事業所のサービスの提供範囲外」である場合です。サービス提供実施地域は「運営規程」に記載されており、事業所が指定申請を受ける際にも自治体に提出しています。そのため、住まいが実施地域外であれば正当に断ることが可能です。

また解釈通知には、「要介護度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止する」との記載があります。介護度が重い、軽いなどを理由にしたり、支払いが滞りそうなことを理由にしたりすることはできません。サービス導入後に継続困難な事象があった場合にも、できる限り契約解除を避けるための努力をする必要があります。

参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長 通知)(抄)」

サービス提供の拒否に値する正当な理由の3つ目に「適切な訪問介護を提供することが困難なケース」とあります。しかし、その事例は明確に提示されていません。

施設介護であれば、常時の医療行為が必要な方や重度の認知症の方などは受け入れていない施設があります。暴力や迷惑行為が著しい方なども、共同生活を営むことが難しいでしょう。受け入れ体制が整っていなければ適切なサービスが提供できません。入居基準については施設ごとに設定され、重要事項説明書等に明記されています。

一方で訪問介護の場合は集団生活ではなく個別で対応するため、受け入れを拒否する理由は少ないかもしれません。提供拒否禁止のルールにより、できる限りサービスを受け入れる努力をしなくてはならないため、拒否する際の判断が難しいでしょう。

訪問介護事業所がサービス拒否する場合の理由には以下のようなことが考えられます。

ご利用者からの迷惑行為暴力行為が著しい場合は、サービス提供を拒否できる正当な理由に当てはまると言ってよいでしょう。ハラスメントについては令和3年度の介護報酬改定において、介護現場のあらゆるハラスメントに対して必要な措置を講じることが義務づけられています。

介護現場で起こりやすいハラスメントは以下のパターンです。

身体的暴力暴力などにより、身体的な危害を加える
精神的暴力言葉・態度・行動により精神的なダメージを与える
セクシュアルハラスメント性的発言・接触・要求によりいやがらせをしたり不快な気持ちにさせたりする

ハラスメント行為があったからといってすべてが契約解除に当てはまるわけではありません。ハラスメントによる結果の重大性や再発の可能性などをみて総合的に判断する必要があります。特に高齢者の場合には、認知症によるBPSDでこれらの行為が引き起こされている可能性もあるので判断が難しいところです。

事業所の対応としては、すぐに契約解除の話をするのではなく、再発予防や関係機関への相談などあらゆる策を講じなければならないとされています。ただし、誠意を尽くして対応した結果改善がみられないのであれば、サービスの拒否や中止は仕方がないことです。

訪問介護サービスで提供できるのは、厚生労働省の通知である「老計第10号」で定められています。ご利用者が保険給付の対象とならないサービス提供を希望される場合には、応じることができません。

例えば、医療行為や過剰なサービスなどを希望された場合には、サービス提供の拒否をする正当な理由に該当します。ただし、その場合は代替案を提案する必要があります。

引用:厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

サービス提供を拒否する際は、事業所の都合で一方的に断ってはなりません。いくら正当な理由に該当したとしても、丁寧な対応をしなければトラブルに発展する可能性があります。トラブルを避けるためのポイントを確認しておきましょう。

契約解除の要件は重要事項説明書に明記しておき、契約を締結するときにも丁寧に説明しなくてはなりません。その上で議事録に残しておけば、いざトラブルになったときにも、重要事項説明書に記載されていることや説明済みであることが主張できます。

また、訪問介護としてできるサービスとできないサービスについて伝えておくことも大切です。保険給付の対象となるサービス、ならないサービスの判断は難しいものなので、明確にしておくとサービス導入後も誤解を最小限に抑えられます。

サービス提供ができない場合は、その理由を丁寧に説明しなくてはなりません。説明が不十分な場合は納得できず、トラブルに発展する可能性があります。

特に、認知症や理解力の低下がある方の場合は、ご家族などキーパーソンを巻き込むと良いでしょう。

ご利用者が希望されているサービスが提供できず、やむを得ずお断りする場合は代替案を提案し、誠実に対応することが大切です。

その方に適した介護保険サービスを提案したり、行政地域包括支援センターケアマネジャーなど相談すべき窓口をご案内しましょう。介護保険サービスで難しい内容であれば、自費のサービスや民間サービスなどをご紹介するのも一つです。

サービス提供を断った場合は、地域包括支援センターに一報を入れておくことがトラブルの回避につながります。代替サービスを紹介する段階で対応に苦慮する場合にも、地域のサービスに詳しい地域包括支援センターに相談すると安心です。サービス提供を拒否されたことで、ご利用者が困らないような配慮が大切です。

ご利用者から依頼があった時点から、対応した内容を細かく記録に残しておくと、クレームがあった際などに事業所の身を守ることにつながります。サービス提供の拒否の有無については、実地指導などで聞かれるケースがあります。

利用相談受付の際に「受付票」などを記入するようにしておくと良いでしょう。

今回の記事は「訪問介護は依頼を断れない?サービス提供を拒否できる正当な理由とは」と題して解説しました。

サービス提供は、正当な理由があれば断ることが可能です。ただし、ご利用者がその先に困らないように、誠実な対応をすることが大切です。また、トラブルに発展した際には、記録が事業所の身を守ります。需要事項説明書契約書の他、利用受付をした際の記録、日々のサービス提供に関する記録などご利用者との細かいやりとりを残しておくことが重要です。

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tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。