近年、介護現場でもインターネットを介したコミュニケーションであるICTの導入が推進されています。
そこでこの記事では、介護事業所がICT導入をする目的や厚生労働省が行うICT支援事業などについて解説していきます。
これからICT導入を検討している事業所の方は、ぜひご一読ください。
介護事業所におけるICT導入
パソコンやスマートフォンなどのIT機器は今やとても身近な存在であり、これらのツールを上手く活用できれば業務の効率化も図れます。
まずはICTの概要を理解したうえで、厚生労働省が推進するICT化について理解を深めていきましょう。
ICTとは
ICT(Information and Communication Technology)は、日本語だと「情報通信技術」と呼ばれており、インターネットなどの通信技術を活用してコミュニケーションを活発化していこうとする概念です。
ITのように情報処理ツールとして考えるだけではなく、これらのネットワークを使ったコミュニケーションにより重点を置いていることがポイントです。
厚生労働省が推進するICT化
日本の課題である人口減少と高齢化に対処するため、厚生労働省は介護現場のICT化を推進しています。
平成28年には介護事業所におけるICT化の手引きも作成し、支援事業に対する補助金の制度も整えました。
令和元年には、介護事業所や法人で計406件の導入支援を行っています。
介護事業所にICTを導入する目的
ICTを導入する目的の1つは、紙媒体による情報のやり取りを見直すことです。
ICTツールによって報告書の作成などの負担が大きい業務が効率化されると、生産性を向上させることも可能です。
ここでは、ICT導入の目的やメリットについて見ていきましょう。
介護職の魅力向上・人材確保
充実した介護サービスを提供するためには、人の力が欠かせません。
しかし、2020年度時点での必要な介護人材は約20万人といわれており、人材確保は今後も大きな課題とされています。
十分な人材を確保するためには、魅力的な職業であると認識されることも必要です。
厚生労働省は魅力的な仕事場には「業務の生産性と効率性の向上」「専門性の確保とキャリアアップ」「利用者からの感謝」の3つが必要だと考えており、ICTを導入することで業務の生産性と効率性の向上を期待しています。
介護従事者の負担軽減
介護記録や個別援助計画などの実働以外の事務作業が、介護従事者の大きな負担となっていることは少なくありません。
また、書類によっては保存期間が決まっており、事業所では所定の年数保存しておく場所などの確保も必要です。
ICTを導入すれば、これまでかかっていた労力や時間、場所の確保の負担が軽減され、業務の効率化が叶うでしょう。
実際に令和元年にICTの導入を行った企業では、約8割が報告などの間接業務の時間を短縮できており、約7割は書類の量が削減されました。
介護サービスの向上
ICTを導入すると、事業所内でのデータが1ヶ所に集約できるため、よりよい介護サービスを導き出せるビックデータを手にしやすくなります。
こうしたデータを基に介護サービスを検討していけば、質も向上していくでしょう。
さらに国としてもビックデータを蓄積する流れは加速しており、今後は科学的根拠に基づく介護を実現していくことを目指しています。
このように、ICTを導入すればより質の高い介護サービスの追及がしやすくなります。
介護事業所のICT導入支援事業
厚生労働省が介護事業所のICT導入をサポートするために取り組んでいるのが「ICT導入支援事業」です。
地域によっては「ICT機器活用による介護事業所の負担軽減支援事業」とも呼ばれます。
この支援事業は、条件を満たせばICT導入にかかった一部費用に対して、一定の補助金が給付される制度です。
補助金の支援内容は都道府県ごとに異なっているため、詳細は各自治体に問い合わせましょう。
対象となる経費について
ICT導入支援事業で対象となるのは、次のツールの購入にかかった費用です。
■介護ソフト
■タブレット端末
■クラウドサービス
■スマートフォン
■インカム
■他事業者からの紹介経費
■Wi-Fi機器の購入・設置
■業務効率化を図るバックオフィスソフト(勤怠・シフト管理など)
補助上限額について
ICT導入支援事業の補助上限額は事業所規模に応じて設定されており、令和2年度の最終予算案では次の補助上限額が定められました。
事業所規模(職員数) | 補助上限額 |
1~10人 | 100万円 |
11人~20人 | 160万円 |
21人~30人 | 200万円 |
31人~ | 260万円 |
上記の金額を補助上限に、補助率は各都道府県が設定しています。
ICT導入支援事業の対象に必要な要件はある?
ICT導入支援事業の対象となるためには、主に次の要件を満たす必要があります。
・介護記録や事業所内での情報共有、請求までの業務を一元化する
■ケアマネ事業所との連携をデータで行う(標準仕様の活用)
■科学的介護データベース「CHASE」による情報収集に対応
■事業所によるICT導入効果の報告 など
なお、介護事業所へのICT導入支援事業の補助金額を決める令和3年度報酬改定では、通所リハビリテーションの質を評価するデータベースである「VISIT」・CHASEにデータを登録する体制がとれているなどの一定要件を満たす事業所の負担をより軽減する制度も加えられています。
これらの要件は、令和元年から年度ごとに拡充されているため、今後も定期的に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
介護事業所のICT導入には、業務の効率化などのメリットがあります。
厚生労働省のICT導入支援事業の要件を満たせば、導入費用に対して補助金の給付もあり、介護事業所の金銭的負担が減らせます。
ICTの導入を検討している事業所の方は、制度も活用しながらそれぞれの組織に合ったツールを選んでいきましょう。
Author Profile
-
5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
Latest entries
- お知らせ2024年9月5日IT導入補助金を活用して訪問介護記録を電子化しよう!テレモバの実績紹介
- お知らせ2023年12月5日LINEスタンプ、はじめました
- コラム2023年11月27日【導入事例】テレッサmobileを導入して得られたメリットとは?株式会社ライフケア・ビジョン様
- コラム2023年5月16日サービス実施記録を紙から電子化するメリットと方法