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介護業界のDXとは?具体的メリットや課題まとめ

介護業界といえば高齢者の方のお世話をする仕事であり、デジタル技術を活用すると言われてもぴんとこない方もいるかもしれません。

しかし、日本ではさまざまな業界でDX化が推進されており、人材不足が深刻な介護業界も無視できない課題です。

今回の記事では介護業界のDXについて、具体的な活用事例やDXのメリット、課題について解説します。

導入にハードルを感じている方はぜひ参考にしてください。

介護業界のDXとは?

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略した言葉です。「Transformation」が「変革」「変化」という意味なので、デジタル技術により、ビジネスや生活をより良いものへと変革することをいいます。

DXはさまざまな業界で導入が進められていますが、介護業界も例外ではありません。令和3年には、介護事業所のICT化にかかる費用を厚生労働省が補助する補助金制度が整備されました。

介護業界も国をあげてDX化の動きが広がっています。

介護DXの具体的な活用事例

介護業界のDXには、介護をサポートする機器の活用のほか、記録や情報共有の効率化などが挙げられます。

ここからは、具体的なDXの活用事例をみていきましょう。

記録や情報共有のシステム化

介護現場では、介護記録などの書類作成業務に手間がかかっている点が問題視されています。ご利用者の記録を残すことや情報共有は介護職員にとって大切な仕事の一つです。しかし、ただでさえ人手不足で忙しい介護現場において、直接的な介護業務ではなく書類作成に大幅な時間が取られてしまうのは避けたいところです。

これまでは、現場で起こった事をメモしておき、あとで正式な書類に手書きで清書していました。申し送り事項も自分のメモに記載しておき、確認しながら業務に当たっている方も多いでしょう。

しかし、介護記録をシステム化することにより、スタッフルームにファイルを取りに行かなくてもその場で情報の確認や記録ができます。入力するので記入ミスをしても書き直す必要もありません。

同じ記録を複数の書式に記載する手間も省けます。例えば、事故が起きたら「介護記録」「事故報告書」「申し送りシート」など複数の様式に記録を残さなければならない事業所もあるかもしれません。記録をシステム化させることにより、それぞれの書式に何度も記載しなくても良くなるので、記録時間が大幅に軽減します。

書類の印刷や書類管理にかかるコストが削減できることもメリットです。過去の記録を検索で簡単にさかのぼれるので、情報分析にも役立ちます。体調や事故の分析もしやすくなるため、ケアカンファレンスなどにも有効活用できます。

グループウェアを活用した情報伝達

グループウェアとは、情報共有や業務の効率化を推進するためのソフトウェアのことです。

メール・チャット・スケジュール管理・タスク管理・ファイル共有・Web会議などの機能が搭載され、所属している職員とのコミュニケーションを円滑にします。

介護の職場でも、グループウェアを利用することにより業務の効率化が実現するでしょう。

センサー・カメラでの見守り

高齢者を見守るためのセンサーやカメラの活用でも、スタッフの業務負荷を軽減することが可能になります。

見守りセンサーとは、ベッドから起き上がった時やベッドサイドに足をついた時などに、スタッフに知らせてくれるセンサーです。転倒のリスクが高い方が動き出した時にスタッフに通知してくれるため、事前に察知して介助することにより事故を予防します。

見守りカメラでも、映像で居室内を映してご利用者の安全を確認することが可能です。通話機能を備えたものや動きや音を検知して通知してくれるものなど、さまざまな機能を搭載している見守りカメラがあります。

センサーやカメラは、転倒事故や徘徊事故の予防に役立つだけでなく、居室を巡視する回数を抑えられるため効率的です。また、履歴が残るため行動パターンが分析でき、ケア方法の検討材料にもなります。

インカムでのコミュニケーション

インカムは、ハンズフリーで使用できる通信端末です。従来のPHSや携帯電話は、1対1の通話ですが、インカムでは一度に多くの職員に話しかけられます。介助中などで両手がふさがっている時にも通話が可能なので、業務が効率化できます。

一人ひとりに伝える必要もないので情報共有もスムーズです。緊急時には迅速に応援を要請できたり、指示を受けたりできるので安心です。

介護現場は常にチーププレイですが、実際にはそれぞれのご利用者の居室などに別れてケアをする時間が多くなります。インカムでつながっている安心感や、職員同士の一体感を生み出すことも期待できます。

介護ロボットによるサポート

介護ロボットとは、要介護者の動作を補助し、従業員の体力的負担を軽減するためのロボット機器です。

高齢者の身体介護は、介護職員に大きな体力的負担がかかります。腰痛など体の不調で退職を余儀なくされる職員もしばしばです。

そのような中、近年では厚生労働省が中心になり介護ロボットの導入が推進されています。

厚生労働省による介護ロボットの定義は以下の通りです。

  • 情報を感知(センサー系)
  • 判断し(知能・制御系)
  • 動作する(駆動系)

参考:厚生労働省 介護ロボットとは

介護ロボットと言えば、高齢者の移動や移乗など体力的な負担を軽減する機器を想像しがちですが、厚生労働省の定義ではこれまでご紹介した見守りセンサーなども含まれています。

移動や移乗の介助に加え、排泄・入浴・見守りなどの介護を助けるロボットが重点的に開発支援の対象になっています。

参考:厚生労働省 介護ロボットの開発支援について

介護DXによるメリット

これまでご紹介した、介護ロボットの活用事例を見るだけでも介護DXが介護現場において有用なのは一目瞭然です。ここからは更に介護DXによるメリットを深掘りしてみましょう。

業務の効率化

介護DXのメリットはなんといっても業務の効率化です。

介護スタッフの業務は、介護サービスを提供するだけでなく、記録などの事務作業も多い仕事です。日々の介護記録・申し送り・計画書・事故やクレームの報告書など、さまざまな書類を作成しなければなりません。これらは、ご利用者の情報共有をするためにも大切な業務ですが、介護DXにより大幅な業務効率化が可能になります。

また、見守りツールや介護ロボットなど身体介護を助ける機器も、スタッフの業務負荷を軽減させます。

これからの介護業界は、介護DXにより従業員がゆとりをもって業務にあたれるように、システムで支援することは重要課題になってくるでしょう。

人材不足対策

ご周知の通り、日本は少子高齢化により介護の人材が深刻な人手不足の状況です。厚生労働省によると、2019年度の介護職員の人数約211万人よりも、2025年度にはプラス32万人の243万人、2040年にはプラス69万人の280万人が必要になると予測しています。

離職率も高いため、常に少ない人員で業務を回している施設も少なくありません。この状況はしばらく続くと予想されるため、業務のシステム化で少ない人員でも業務を遂行できるように対策をとる必要があります

また、従業員の身体的負担を軽減したり残業時間を削減したりして、働きやすい環境にすることにより離職率を下げる効果も期待したいところです。

参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

感染症対策

新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療や介護の現場でも様々な課題に直面し、ITの活用が必須なものとなりました。

デジタルの力を活用することで人との接触をできるだけ避け、感染リスクを最小限に減らせます。また職員が感染症で出勤できなくなった場合にも、業務を効率化させて少ない人材で乗り切ることが可能になります。

介護施設では、新型コロナウイルス感染症の拡大以前より、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症により通常の業務がひっ迫するケースがよくありました。新型コロナウイルスの流行をきっかけに一気に加速した介護DX化の流れですが、これを止めることなく、常に進化させていく必要があります。

サービスの質の向上

介護DXは、サービスの質の向上が期待できる点もメリットです。記録のシステム化や見守りツールの導入により、データを分析して一人ひとりに合った介護計画が立てられます。

また、情報共有ツールの活用により、伝達ミスや業務の抜け漏れを防止することで、事故予防やクレーム予防も期待できます。

介護スタッフの業務負担を改善し、介護サービスにあてる時間を増やすことができれば、よりサービスの質の向上につなげられるでしょう。

介護業界におけるDXの課題とは?

介護業界におけるDXの課題にはどのようなものがあるでしょうか。

コストが高い

介護DXの促進を阻む要因にはコスト面の問題があります。デジタル機器や設備を導入するにはある程度の費用が必要です。加えて、維持費も継続してかかることになります。

費用対効果を求めることが難しいため、コストをかけた分の成果が現れるのかという心配もあるでしょう。

デジタル化による効果は長い目でみて確認する必要があります。しかし、小規模な施設や事業所では予算が限られる中、なかなか導入に踏み切れないことも課題です。

職員のITスキルにばらつきがある

介護DXの課題には、職員のITスキルにばらつきがあることもあげられます。

そもそも介護職の方々には、ITになじみのない世代の方も多いため、システムを導入しても使いこなせるのか不安な方が多いかもしれません。経営陣自体が、新しい取り組みに尻込みしてしまうケースもあるでしょう。

システムを導入するには、操作方法を覚える勉強会を行ったり、導入後のシミュレーションを行ったり丁寧に進める必要があります。システムを定着させるには職員全員の理解が欠かせません。職員に対して、システム化によるご利用者と職員のメリットをしっかり伝えて、協力してもらうことが大切です。

介護業界もDXの推進が求められる時代

今回の記事では、介護DXについて解説しました。日本は今後もますます高齢化が進むと見込まれています。デジタル技術の活用で、業務を効率化させて生産性を上げることは必須なものとなります。

介護DXと聞くと難しそうな印象を抱きますが、取り組みやすいことも多くあります。導入しやすいことから進めてみることがおすすめです。

IT技術を導入し、ご利用者にも職員にも心地よい環境を整えましょう。

Author Profile

tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。