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訪問介護で起こりやすいハラスメント事例と対処法を徹底解説

近年、テレビなどでもハラスメントの問題が頻繁に取り上げられていますが、介護現場も例外ではありません。上司や仕事仲間からのパワハラだけでなく、ご利用者やそのご家族からのカスタマーハラスメントも問題になっています。

少子高齢化の日本において介護人材の確保が重要な課題となっている中、職員が安心して気持ちよく仕事を継続するためにも、ハラスメント対策を講じることが必要です。

今回は、訪問介護で起こりやすい利用者や家族等によるハラスメントについて解説します。事例や対処法も詳しく説明しますのでぜひ参考にしてください。

介護現場で起こりやすいハラスメントは以下のパターンです。

身体的暴力暴力などにより、身体的な危害を加える
精神的暴力言葉・態度・行動により精神的なダメージを与える
セクシュアルハラスメント性的発言・接触・要求によりいやがらせをしたり不快な気持ちにさせたりする

これらのハラスメントは、ご利用者だけでなくご家族から受けることもあります。

厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」によると、以下のケースはハラスメントではなく、別の対応が必要になるとしています。

  1. 認知症によるBPSD
  2. 利用料金の滞納
  3. 苦情の申立て

認知症によるBPSDとは、認知症によって出現する暴力・暴言・徘徊・拒絶・不潔行為などの「行動症状」や、抑うつ・不安・幻覚・妄想・睡眠障害などの「心理症状」のことです。例えば、認知症の方から暴力を受けたり、幻覚や妄想が原因で暴言を吐かれるなどの行為です。このような行為に対しては原因が、認知症や脳の損傷によって引き起こされる症状のため、医療的なアプローチが必要になります。

しかし、職員を暴力や暴言から守らなければならないことには変わりありません。いくら原因がBPSDだから仕方ないと分かっていても、精神的なダメージは大きいものです。BPSDの行動や症状にも理解しつつ、然るべき対応が必要です。

利用料金の滞納は、その際のやり取りがハラスメントに該当することもありますが、債務不履行として法的な対応が必要になる場合があります。

事業所内でクレームが解決しきれない場合は、事業所が設置する第三者機関の相談窓口や市町村を案内します。それでも解決しなければ国民健康保険団体連合会へ苦情を申立てができることを伝えましょう。

介護職の中でも訪問介護でハラスメントが起きやすい理由を考えてみましょう。

介護の現場でハラスメントが起きやすいのにはさまざまな原因がありますが、一つは体の不自由な方や認知症を患っている方には、ご本人もご家族も不安やストレスを抱えている方がたくさんいるからだと考えられます。在宅介護のご家族のストレスは計り知れません。介護サービスに大きな期待を抱いている方も多く、思っているようなサービスが受けられなければクレームに発展してしまうこともあります。

訪問介護はご自宅で1対1の対応を行い、ご家族との距離も近いサービスです。親密に関わる機会が増えるため、トラブルにも発展しやすくなります。介護の仕事の中でもとくに訪問介護は女性スタッフの割合が高いため、セクシュアルハラスメントなどの被害も受けやすくなります。身体介護では体が密着することも多く、ご利用者との距離が近いのもハラスメントを受けやすい原因の一つです。

訪問介護に限りませんが、ハラスメントが起きてもその内容がハラスメントなのかそうでないのか線引きが難しいのも声を上げにくい理由です。プロとして対応しなければならないと考え、我慢する方も少なくありません。認知機能が低下している方もいるので、ハラスメントなのか認知機能の低下によるものなのか判断がつきにくいのも事実です。

訪問介護で起こりやすいハラスメント「身体的暴力」「精神的暴力」「セクシャルハラスメント」の具体的な事例と対処法をご紹介します。

身体的暴力は、力を使った暴力により身体的な危害を加えることです。

具体的な事例には以下のようなものがあります。

  • 叩く
  • 殴る
  • 蹴る
  • つねる
  • 引っ掻く
  • 髪を引っ張る
  • 服を引っ張る
  • ものをなげつける
  • 手を払いのける
  • 首をしめる
  • つばをかける

身体的暴力は、認知症が原因になっていることもよくあります。そのようなケースでは複数人で対応することが有効ですが、訪問介護は1人で自宅へうかがうケースがほとんどなのでなかなかそうはいきません。ご家族に協力していただける場合は力を借りるなどの対処も必要になります。また、安全を確保するために距離を保ち、周りに危険物を置かないようにしておくことも大切です。

  • 大声でどなる(罵倒・威嚇)
  • 高圧的な態度
  • 理不尽なを要求
  • 無視をする
  • 脅迫する
  • 個人の尊厳や人格を傷つける(いやみ・名誉毀損・侮辱・人格否定・見下した態度)

精神的暴力はご利用者だけでなくご家族から受けるケースも多いハラスメントです。利用者を思うがあまりに介護サービスに対して過度に期待している場合などもクレームにつながることがあります。精神的暴力は、スタッフの心に大きなダメージを与えてしまいます。自分自身を責め、精神的に追い込まれてしまう場合もあるので注意が必要です。

性的発言・接触・要求によりいやがらせをしたり不快な気持ちにさせたりする行為を言います。

具体的には以下のような行為です。

  • 身体を触る
  • 抱きしめる
  • あからさまに性的な話をする
  • いかがわしい写真などを見せる
  • 下半身などを見せつける
  • 性的な誘いをする

セクシャルハラスメントは、男性ご利用者が女性スタッフに対して行うケースが多いハラスメントです。施設などでは同性介助で対応する場合もありますが、訪問介護は女性ヘルパーが多いので対応するスタッフを変更するのもなかなか難しいのかも知れません。ご自宅で1対1のケアになるのでハラスメント対策には注意が必要です。

実際に職員がハラスメントを受けたときに行うべき対応を以下にまとめました。

ご高齢者の気持ちに寄り添いいたわらなければならないとはいえ、いかなるときもハラスメントは許されるものではありません。どんな要求でも受けられるものではないので毅然と対応することが大切です。

怯えているような態度をしたり、我慢したりするとエスカレートしてしまう可能性もあります。我慢せず冷静にやめてほしいことを意思表示しましょう。

ハラスメントに対して毅然とした対応でその場を収められていたとしても、ご利用者に関する情報は必ず共有しなければなりません。事実を管理者やサ責に報告・相談することが大切です。

ハラスメントが日常的に繰り返されている場合、怪我を負ってしまったり精神的に追い込まれてしまったりすることも考えられます。最悪の場合は仕事が続けられなくなる方もいます。

何よりも自分の身を守ることが大切です。1人で抱え込まずにいち早く管理者・サ責に伝えましょう。

職場の上司に相談しにくい場合や相談したけれど対応してもらえない場合には、外部の公的な窓口でも相談を受け付けています。地域ごとに相談窓口が設けられている場合もあるので、お住まいの自治体を検索してみるとよいでしょう。例えば東京都では「介護現場における利用者・家族等からのハラスメントのお悩み相談」として相談窓口が設置されています。

ほかにも以下のような公的窓口もあるので参考にしてください。

各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの379カ所に設置されている。あらゆる分野の労働問題が対象。

参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

0570-003-110にダイヤルすると最寄りの法務局につながる。面接による相談も可。

参考:法務省「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」

ハラスメント対策はスタッフ個人だけで行うものではありません。スタッフの働きやすい環境作りのためにも事業所全体で取り組むべきです。事業所でできることを考えてみましょう。

職員はご利用者からハラスメントを受けていても認識できていない場合があります。介護の仕事だから我慢しなければならないと思っている場合や、自分が至らないから仕方ないと思っている場合もあるでしょう。

ハラスメントを防止するためには、一人ひとりがハラスメントに対して正しく理解しなければなりません。そのために事業所は、対応マニュアルを作成するなどハラスメントに対するルールを定め定期的に研修を行います。そして、事業所としてのハラスメントに対応する姿勢を職員に伝えることが大切です。

ご利用者からハラスメントを受けても、なかなか相談できず一人で抱え込んでしまう職員も多くいます。事業所がいち早くハラスメントに対応するには、どんなささいなことでも報告・相談しやすい環境づくりをする事が重要です。

令和3年度の介護報酬改定では、介護サービス事業者に対してハラスメント対策が義務付けられています。事業所としても相談窓口を明確にして、マニュアルや研修で周知徹底しておきましょう。

ハラスメントの内容によっては、事業所内で対応が難しい事例もあります。そのような場合には、担当のケアマネジャー地域包括支援センター行政などが相談先になります。また、医療的な側面から医師や看護師に相談することも有効です。

問題を放置することなく、素早い対応で職員を守ることが事業所の役目です。

ハラスメントに対する事業所の姿勢はご利用者やご家族にも周知しておくことが大切です。

契約時には介護保険サービスとしてできることとできないことを説明し、ハラスメント発生時の対応、正当な理由がある場合には契約解除もやむを得ないことをしっかりと伝えておきます。

ご利用者のハラスメントは日頃のケアの方法で解決できるケースもあります。適切なケアが提供できているかカンファレンスを行い見直すことも大切です。

例えば、スタッフの対応に不満があったり、体調や不快感があったりしてもうまく伝えられないことから暴力や暴言につながってしまう方がいます。そのようなケースではご利用者の心身の状況を記録に残しておくことで分析につながり、対処法が見つかるかもしれません。

普段から記録などを通してヘルパーからの報告を注視しておきましょう。

今回の記事では訪問介護のハラスメントについて解説しました。

訪問介護は自宅で行うため、管理者やサ責がケアの状況が見えにくい状況です。問題が起きていても事前に察知することができなければ、トラブルになってしまうことも考えられます。

ご利用者の心身の状況やサービス状況を把握するためには正確な記録を残し適宜報告、相談することが大切です。訪問介護サービスの実施記録をLINEアプリで報告できる「テレッサモバイル」を検討してみてはいかがでしょうか?

テレッサモバイルなら、スマホで簡単に入力できるためヘルパーさんの記録の効率化になります。記録後は送信するだけなので、サ責もタイムリーに情報をキャッチできます。

ヘルパーさんとのコミュニケーションを円滑にするためにも、ぜひ検討してみて下さい。

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tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。