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訪問介護事業所によくあるクレーム・苦情の事例と対処法を解説

訪問介護事業所のサ責さんの中には、ご利用者からのクレームに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。介護は対人援助のため、ご利用者とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、誤解や不満が起きてしまったりしやすいかもしれません。理不尽なクレームも少なくないため、ヘルパーさんが疲弊してしまわないように注意が必要です。

そこで今回の記事では、訪問介護事業所によくあるクレームや苦情の事例と対処法を解説しますのでぜひ参考にしてください。

英語の「claim(クレーム)」には本来、「強く主張する」「正当な権利として要求する」という意味があります。しかし、日本ではネガティブな意味合いが強く、サービスや購入した商品に不具合や不満などがあり、対応を求める場合に「クレーム」という言葉が使われるのが一般化しています。

「苦情」は、「他から害や不利益などをこうむっていることに対する不平・不満」を表す言葉で、クレームよりやや強い不満を示す印象があります。

「クレーム」という言葉は和製英語として浸透しており、「苦情」とまったく同義で扱われることが多いため、区別することが難しいかもしれません。しかし、訪問介護事業所としてお客様にとるべき対応はほとんど同じです。

介護保険制度では、サービス事業者等は苦情受付窓口を設置しなければならないと定められています。利用申し込み時には、苦情受付担当者や連絡先などについて、ご利用者やご家族にわかりやすく説明しなければなりません。

サービスを利用した際の苦情は、できる限り事業所内で解決することが望まれます。しかし、ご利用者側が直接事業所に苦情を言いづらい場合や、苦情を受け付けたものの解決に至らない内容もあります。その際に対応するのが市区町村国民健康保険団体連合会です。事業所は、これらの窓口についても利用者やご家族にあらかじめ説明しておく必要があります。

苦情・クレームの中には、理不尽なクレームも存在します。最近では、度を越した理不尽なクレームを突きつける「モンスタークレーマー」が社会問題化し、サービス業である介護業界も例外ではありません。

ケアプランの内容や介護保険サービスの範囲外のことを要求したり、トラブルをヘルパーのせいだと決めつけてしまったりするなど、さまざまなクレームのパターンがあります。

難しいのが、その言動がご利用者の疾患から引き起こされているパターンです。認知症の症状により物盗られ妄想がある方や攻撃性が増してしまう方がいます。

ご利用者によっては加齢により判断力や理解力が低下している方もいるため、そのような場合には問題解決が困難になり、事業所側も頭を悩ませてしまうケースが多いでしょう。

ここからは、訪問介護事業所でよくあるクレームや苦情の事例をご紹介します。

訪問介護事業所で多いのが、ヘルパー自身の対応や接遇などについてのクレームです。

具体的な内容の一例は以下の通りです。

  • 介護職に相応しくない身だしなみ(服装・ネイル・髪形・アクセサリー)
  • 身だしなみが不潔
  • 乱暴な言葉遣い
  • 見下した態度
  • 尊厳を傷つけるような発言
  • 冷たい対応
  • 無視をされている感じ

対応や接遇は個人の問題も大きいので、個別に指導が必要なケースが多いかもしれません。また、介護職の職業倫理・人権擁護・虐待防止・マナー・接遇といった研修を通して、ヘルパーとして大切にしなければならないルールや心構えについて共有しておくことも重要です。

訪問介護事業所ではサービスの質についてクレームを受ける場合もよくあります。

  • 掃除が行き届いていない
  • 料理がおいしくない
  • 消耗品がなくなるのが早い
  • 食材を無駄使いしている
  • 身体介護が乱暴なので痛い
  • 排泄介助、入浴介助などが雑で清潔になっていない
  • 頼まれたことをしていない、忘れている
  • 介助がせわしない

サービスについても、個人の力量が問題になっていれば個別の指導を行います。経験が浅いスタッフで、介護技術に不安がある場合にはレクチャーや同行訪問などでフォローが必要です。

施設とは違い、訪問介護の生活援助ではそれぞれの家のやり方を覚えなければなりません。個別性が高いため、ご利用者とうまくコミュニケーションを取りながら、要望に沿ったサービスを提供する必要があります。

介護サービス中に起こりやすい事故には以下のようなものがあります。

  • 転倒、転落
  • 誤嚥、窒息
  • 誤薬、異食
  • 徘徊(行方不明)

これらの事故はヘルパーのミスや不注意によるもの、訪問中に見守りが行き届いていないために起きてしまうものがあります。事故により、ご利用者にケガや健康被害を与えてしまうだけでなく、最悪の場合には命にかかわることも考えられるため、特に注意しなくてはなりません。

訪問介護サービスは自宅で行うサービスなので、物のトラブルが発生するリスクも高いでしょう。ご自宅にある物を破損させてしまう、洗濯物を縮ませてしまうなどのクレームが考えられます。

難しいのが「物がなくなった」「お金がなくなった」などのクレームです。物盗られの苦情は、認知症による物盗られ妄想や、勘違いによるケースもあるからです。しかし、実際にヘルパーが認知症のご利用者を狙って、貴重品や金銭を盗んで逮捕される事件も発生しているため、一概に勘違いでは片付けられません。ヘルパーが貴重品やお金を盗んでいたのならそれは犯罪になるため、慎重に事実確認をする必要があります。訪問介護では買い物などでご利用者のお金を扱う援助もあるため注意が必要です。

ヘルパー個人ではなく、事業所としてクレームを受けるケースもあります。

  • 担当ヘルパーやスケジュールがよく変わる
  • ご利用者、家族への相談や報告が少ない
  • 家族への連絡頻度が多すぎる
  • 質問の回答が曖昧
  • 利用者の要望や注意点がスタッフ間で共有できていない
  • 希望のサービスを行ってもらえない

事業所のサービス内容についてクレームを受ける場合に考えられるのは、事業所側の説明不足です。サービス導入時に、介護保険制度のルールとして「できることと・できないこと」を明確にしておかなくてはなりません。要望に応えたくても制度上は難しいことをはっきり伝えます。必要に応じてケアマネジャーから説明してもらうとよいでしょう。

料金に関しても、ご利用者の認識不足や事業所側からの説明不足から起こるケースがあるので注意が必要です。

  • 利用料金が高い
  • 追加料金が請求された
  • 利用していないサービスが請求された

介護保険制度は、一度説明されてもご利用者やご家族が理解するのは難しいものです。料金体系についてはサービス導入時はもちろん、サービス内容や回数が変わった時にも丁寧に説明しなくてはなりません。臨時でサービスを要求された時や、自費サービスが発生した時なども料金について細かく説明して、認識不足を起こさないようにしましょう。

どれだけ気をつけていても、サービス業をしている限りクレームや苦情は起きてしまうものです。クレーム・苦情を受けた時の対処法を身につけておきましょう。

まずはご利用者の話をよく聴き受け止めます。怒りの感情を冷静に受け止めるのはしんどいことかもしれませんが、丁寧に話を傾聴することが大切です。怒りで興奮しているのをさえぎって事業所側の主張をしてしまっても、ご利用者は受け止められず火に油を注ぐだけです。まずは、丁寧に話を聴いてご利用者の感情が落ち着いてからこちらの話をするようにします。

この時、事実に対して確認が取れていない段階では謝罪する必要はありません。しかし、不快な思いをさせてしまったことや、お気持ちに気づけなかったことに対しては謝罪するとともに、貴重なご意見をいただいたことに感謝を伝えると良いでしょう。

事業所に戻ったら速やかに事実確認を行います。この時、クレームの対象がヘルパーだった場合には心情に配慮しながら慎重に行わなくてはなりません。内容によっては指導が必要なケースもありますが、ご利用者からのクレームが正当でないケースもあります。ヘルパーに非がない場合でも、精神的なダメージで業務に支障が出てしまうことも考えられるため注意が必要です。ヘルパーに不信感を与えかねないためにも、適切な対応を取るようにしましょう。

事実確認の結果、事業所側に非があった場合にはご利用者やご家族に誠意を込めて謝罪します。逆に、事業所側に非がなかった場合には、事実に基づいた説明をおこないます。このとき、重要事項説明書やケアプラン、記録物などの証拠になるものがあればベストです。そのうえで、できる限りご利用者の意向に沿った対応を行う姿勢をみせることも大切です。改善策代替案を提示して、納得していただけるように話し合いましょう。

ご利用者との話に折り合いがついたら、二度と同じ問題が起こらないように、事実の事例共有再発予防策を周知徹底することが大切です。

このときにも、ヘルパー当事者に対しては事例共有の意義を伝え、情報が共有されることに対しての心情に配慮しなくてはなりません。事例共有はクレームの再発防止と、事業所全体のサービス改善につなげるためであると前向きにとらえる必要があります。

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今回の記事では、訪問介護事業所によくあるクレームや苦情の事例や、対処法について解説しました。介護の仕事は対人サービスのため、クレームや苦情は避けて通れません。そのため、一度いただいたクレームを今後の糧として業務改善のきっかけにつなげていくことが大切です。

介護事業所のクレームは、スタッフ間の情報共有が不足していることにより引き起こされることがしばしばあります。ご利用者の心身の状況やサービス内容について、事前に知っていれば避けられるクレームやトラブルは多いものです。

訪問介護事業所の情報共有を円滑にするためには、介護ソフトの導入がおすすめです。介護ソフトを導入することで、サ責とヘルパーのコミュニケーションが円滑になるため、情報伝達不足が最小限におさえられます。

訪問介護に特化した「テレッサモバイル」なら、幅広い年代になじみのあるLINEアプリを使用し、簡単に実績報告と情報共有ができます。サービス終了後、すぐに送信すればタイムリーにサービスの状況が把握できるためサ責も安心です。

ヘルパーさんの負担を少しでも軽減し、サービス改善ができるようにぜひ検討してみてください。

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tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。